Glorio #03

目を覚ましたとき、一番初めに目に入ったのは天井に吊るされた温かなランプの明かりと、サッパリした短髪のモンクのお兄さんの
心配そうに僕を見下ろす顔だった。
僕が目を開けたのに気づいたモンクのお兄さんは、小さく「おっ」というと、近くのソファで眠っていたプリーストのお兄さんをガクガク揺すり起こす。

「…んだようっせえな。」

気持ちよく寝てるとこをムリヤリ起こされて、プリーストのお兄さんは機嫌が凄く悪そう…。
小麦色の髪を掻き揚げながらさっきのモンクのお兄さんを睨みつけてる。
だけど、僕がベッドから起き上がったのが視界にはいると、少し和らいだ表情で優しく
囁きかけてくれた。

「やっとお目覚めか。気分はどうだ?」
「ほへ?」
「なんだ、覚えてないのか? お前、ポリン島でアクエンに襲われて瀕死ぶっこいて倒れてたんだぜ? リザしてヒールかけてやったから、
傷は治ってるはずだけどな」

言われて、腕や身体を大きく捻ったり動かしたりしてみる。
痛みもないし、普通な感じ。

「んと…ダイジョブです。たぶん。。」
「たぶんって…随分曖昧な返事だなあ。ジェン、ちゃんとヒールとかキュアとかしたのかよ」

プリーストのお兄さんは、「ジェン」さんって言うのかな。
モンクのお兄さんに言われて『俺様を誰だと思ってんだ。天下無敵天才美麗プリ様
だぜ?!』って怒ってる。
と、そこにボンゴン帽を被った長身の人が現れた。
ボンゴン帽に貼りついてるお札で顔が隠れてて見えないけど…たぶんお兄さんかな??
腰には二本の見たことの無い武器を携えている。

「お、キル。おかえり…って、何持ってきてんだよ?!」

その姿を見たモンクのお兄さんが大げさな身振りでボンゴンお兄さんの抱える物を
指差している。
僕も指先に視線を這わせてみてビックリ。

「おっきな牛っ!!!!」

ボンゴンお兄さんが腕に抱えていたのは、3人のなかできっと一番背の高いこの人よりもニ回りも大きそうな"ごっついミノタウロス"。
確か、どっかレベルの高いダンジョンに出てくるモンスターだったような…。

「表通りで小規模テロってたから適当に参戦してきた。それと…」

腰の巾着から何かを取り出し、プリーストのお兄さんに放り投げる。
あれってもしかして…。

「おあっ?! "虎の足"…って、エドガまで出たのかよ」
「ああ。スティール+戦利品、だ。」
「さんきゅ♪ これで学生帽ニ個目ゲットだぜ!」

エドガっていうのは、虎によくにたモンスターで、凶暴なボスモンスターの類にあるって、修道院で習った覚えがある。
"虎の足"はその戦利品で、10こ合成して"学生帽"が作れるらしい。

それにしても、ボスや強いモンスターを難なく倒せちゃうこのアサシンさんって一体何者?!

そんなことを考えていると、そのアサシンさんの背後からよく見知った顔が飛び出てきて勢いよく僕に抱きついてきた。

「ヴェニ〜〜〜〜〜っ!! 
聞いてよぉ〜、もうキルしゃまってばスッゴクかっこいいんだよう(>?<)
つっよそ〜〜〜〜で、恐そ〜〜〜〜〜なモンスターたちを攻撃全く受けないで
バシュバシュっ シュシュシュシュシュっってやっつけちゃって、テロもあっというまに
終っちゃったのっ!! とくにさ〜、エドガーにトドメさしたときのソニックローブなんて」
「"ソニックブロー"」
「そそ、それっ。もうスンゴクかっこよかったんだからあ(>?<)=з」

タックル(抱きつき)されたとおもったら、マシンガンのように一気に出来事を喋って…途中、アサシンさん…名前は「キル」さまっていうのかな?
…に技名訂正されてたけど、なんていうか…超ハイテンションなこのマジシャンは、僕の相方の「レグルス」。
僕と一緒にアークエンジェルに襲われて…きっとこのお兄さんたちに一緒に助けられたのかな。
ぅぅ…キルしゃまがカッコヨカッタのはもうわかったから…そんなに顔近づけて力説しないでよぉ、鼻息があっ鼻息がああああっ!!

僕はレグを引き剥がし落ち着かせると、僕たちを助けてくれたであろう3人のお兄さん達にお礼と自己紹介をした。







アークエンジェルに深手を負わされ、通りすがりのジェンたち一行に保護されたアコライトのヴェニアス&マジシャンのレグルス。
彼らの話によると、2人が意識を取り戻したのは保護されてから4日後のことだという。

二人が持っていた冒険者手帳―ノービス(初心者)以上の冒険者は誰もが携帯を義務付けられている物で、
所属する各職業ギルドから発行され、持ち主のレベルや能力・戦歴などを数値で現すカード状の物である―
から2人の実力と、ノービスを卒業したばかりだということを知ったジェンたちは、あまりの世間知らずで未熟すぎる2人を、
一人旅ができるまでの間旅路につき合わせることにした。

「僕は"ヴェニアス"っていいます。えと、こっちは相方のマジシャンの"レグルス"です」

先程のテロでキルが取って来た"ごっついミノタウロス"の肉で作ったビーフシチューをよそりながら自己紹介をする。

「俺は見て分かるとおり、天才美麗プリの"ジェン"。こっちはアサシンの"キル"。
 顔イイくせに、何故か常にボンゴン帽子(の御札)だとか、目隠しだとかで顔隠してんだよな。
 んで、俺の反対隣にいるアホ面モンクは、My Petの"グレイブ"。」
「誰がペットだっ!!」

仲間を自分流に紹介するジェンに、その言い方が気に食わなかったのか、猛反発するグレイブ。
キルは帰ってきたっきり、ほとんどなにも喋らずに考えに耽っているかのように見える。
ここは、首都プロンテラの一角。
宿に泊まるのを嫌がるキルが、自らの資金で買い取った言わば"別荘"のようなもので、(しかし住居申請を出していないため。
また人のほとんど通らない場所を選んでいるので、彼らがプロンテラに居る間ここを使用しているということは、恐らく誰も知らないであろう)、
通りの賑わいも煩く聞こえず静かな休息を得るには調度良い場所だった。

「ところで、お前ら二人の冒険者手帳を見る限り、てか実戦みてる限り」

食器洗いを全てグレイブに任せ(半場強引に押し付けたが)、二人用ソファのど真ん中に偉そうにふんぞり返りながら、
ジェンは新米チビッコ二人に説教を始める。

「魔法の使い方とか戦闘の仕方が、ドヘタ。ヴェンは無駄にヒール打ちすぎ。だからSPすぐなくなるんだろ。
 レグも相手の属性ちゃんと考えろ。おまえソレでもマジシャンかよ。ったく、そんなんでよく修道院卒業できたな。」
「ぅぅぅ」

次々と指摘され、言い返せることなく縮まるレグルスとヴェニアス。
そんなこんなで、暫くの間、レグルスはグレイブとともに。
ヴェニアスはジェンのもとで修行を受けることになったのだった。







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