Glorio #11

自分よりも大きなその男を背負いながら帰宅したジェンは、自室のベッドまで辿り着くと力つき、彼とともに倒れこんだ。
モロクより帰宅していたキルは、見知らぬ不審者に警戒の眼差しを向けつつ、その男の下敷きになっているジェンを引き起こす。

「何者だ?こいつは…」
「知らねぇよ…あー重かった。なんか知らねぇけどコイツの窃盗現場に居合わせちまって…したら共犯者に見られてさぁ。
 俺まで追われるハメんなって…したら今度コイツ、逃走真っ最中に咳き込んでぶっ倒れやがったの。」
「……チェイサー…ローグ…?手帳には職も身柄もなにも書いていない…。それよりも、この男、どうするつもりだ?」

やはり警戒を緩めないキルに、ジェンは肩をすくめて言う。

「だってよ、さすがにその場に放置ってワケにもいかないだろ。他人でも、一緒にその場に居あわせちゃったたんだから。
 熱もあるようだし、目ぇ覚ますまでくらいは、構わねぇだろ?」
「………。なら、意識が戻ったら呼べ。いいな。」
「ほいほい」

寝室の戸を閉め、壁にもたれながらキルは深く息をついた。
国王陛下から受けた任の調査のため、モロク…アサシンギルドに探りを入れたのだが、事態は思った以上に深刻で規模が大きい。
このところ頻繁に起きて居る各地での大規模テロ。
これは単に『古木の枝』をつかったモンスター召還だけではない。
セージのスキル『アブラカダブラ』により、ボス類を呼び出して居るのだ。

それは個人単体もしくは小人数派による悪戯ならまだ何とかなるのだが、悪いことに組織ぐるみ…それも大規模な勢力。
加え、足どころ、構成メンバーまでも掴めない。

ただ一つ、攻城戦に度々参加しているフローネや、その他ギルド関係者の話を聞く限りわかっているのは、ここ数ヶ月。
『大手』と名の知れた幾つものギルドが、次々に壊滅しているということ。
つい先日の攻城戦の時にも、「最大大手」と言われた1ギルドが、一瞬にして無残にも壊滅させられた。
このように、膨大な戦力と勢力を誇るギルドでさえも簡単に潰されてしまうのだ。
如何にして、この短期間でそれほどの勢力・人員を揃えたのかも分からないが、何れその刃が自分らに向けられないとも限らない。
面倒事は極力避けたいところだが…他人事ですむ問題でもない。
かといって、プロンテラや見知らぬ他人の為に、危険な組織に単身乗り込むようなヒーローを気取るつもりもさらさらない。

動機はただ一つ。
仲間を…大切な人を守るため。

多大なリスクなんて百も承知だ。
もしかしたら、アサシンギルドの任務よりも遥かに死ぬ確立は高いだろう。

それでも、無二の大切な者を守るために抗おうじゃないか。

アイツからタイセツナモノを奪った…せめてもの、償いに。




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