Glorio #12

フェイヨン・チュンリム湖中央に位置する砦内。
後に始まる攻城戦に向け、準備を整えたメンバーたちが既に集結している中、相方の姿が無いことに御剣は首をかしげた。

「クライは?」

相方の稼ぎ仲間であるチェイサーの"シェイド"にその行方を尋ねるが、数時間前、自分と共に出たっきり戻らないという。
サブマスターでありながら、毎度の攻城戦では主に指揮を務める彼が不在なのは困りものだ。
生まれつき、原因不明の病を抱えており、開戦数時間前…現時刻に当たる…普段は体力温存のため此処で仮眠を取って居るはずなのだが…。

「御剣、リーダーと一緒じゃあなかったのかい?」
「うん…新しい武器とクローンに寄り道していくって行ってたから先に戻ってきたんだけど……(アタシも寄り道してきたけど)」
「今日は、見物客が二人ほど来てるからリーダーにも承諾取りたいんだけど…参ったな…。」

シェイドのやった目の先には、両者とも、ならず者ばかりのこの場に相応しく無い勇猛で誠実そうなロードナイトと、これまた同じく大人しく御しとやかそうなハイプリースト。
前者は男、後者は女性。どちらも歳は自分と同じくらいといったところだろう。

「アンタたち…見物っていっても何も面白いもんなんて此処には無いよ?アタシらは身寄りの無い捨てられ人の寄せ集めだからね。ギルドを探してるなら、他をあたるのを進めるけど。」

御剣率いるこのギルドは、いわば世に捨てられた者達の"ホーム"。
それ故、世間からは忌み嫌われ、始末しようと狙われることもしばしば有る。
ロードナイトにハイプリースト。どちらもGvギルドなら何処でも需要はあるはずだ。
何も、命の危険のあるこのギルドに態々所属することもないだろう。

「えぇ…そうなんですけどね…」

ハイプリースト(名前はティア というらしい)によると、彼女とロードナイト(こちらは"リーベル")は、転々とギルドを渡り、自分らに合う処を探して居るらしい。
前は大手ギルドと名の有る「DEVIL HEART」に所属していたようだが、先月、長期滞在狩りに揃って出かけている間に、いつの間にかギルドが消滅してしまい、また新たな「居場所」を探し、此処まで足を運んできたとのこと。
それならば、尚のこと別のギルドを紹介したいところだが、折角の珍客をそうそう追い返すのも申し訳無い。
御剣は二人に、「見物」と「緊急時即座撤退」を条件に、同行を認め、クライアの所在を確認すべくギルドアナウンスを流す。

『クライ、聞こえる?早く砦に戻ってきて。もうすぐGv始まるよ。クライ、聞こえてる?ねぇ何処に居るの?』

「……反応、ないな。」

間をおいてシェイドが眉間にしわを寄せる。
嫌な予感だ。

「何処かで倒れてないといいけど…」
「どうするんだ?御剣。もう開戦まで間も無いぜ。」
「…取りあえずは今までどおりの防衛でいこう。クライが来るまでいつも通りの防戦を張って。アタシもいつもと同じ位置から。」
「指揮は御剣が?」
「そうだね…でも、超団体が来るまでは監視位置離れられないから…接戦位置まで来た場合の判断はシェイドに任せる。クライの傍でいつも見てるからわかるでしょ?」
「んなこと急に頼まれてもな……」
「アタシが戻るまでの間でいいから、なんとかやってみて」
「了解っと」
「そしたら、皆そろそろ行くよ。…ヤバイと思ったら絶対無理強いしないで直ぐに退いて。命を粗末にしちゃだめだよ。」

御剣の指揮を合図に、全員が配置に着き、見物のティアとリーベルは接戦の邪魔になら無い位置から見守るよう待機する。
出陣前、御剣はマスタールームに先刻渡すと約束した物を、置手紙と共にクライアに宛てて。




チュンリム湖 砦NO.5。
ギルド「Bloody cross」が長らくに渡り所有。
ギルドマスター「御剣」 - アサシンクロス




攻城戦開始数分前。
ギルドフラッグを前にほくそ笑む陰が、チュンリム湖中央砦前にあった――…。



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