Glorio ~another Story~ #10

recollection 1 (Jasty&Flone)



〜同時刻、フェイヨン…。〜


最早住人の気配すら無く、廃墟と化した社や棟々には雑草が生い茂り、「弓手の宝庫・フェイヨン」と謂われ賑わった面影は、今はもう"跡地"となってしまった故郷…弓手村からは、一欠片も感じられない。

5年前の惨劇…。
たった一人の賢者の手によって、村は壊滅させられた。
何者かも、動機も分からない。
唯一つ明確なのは、その賢者の暴動により、村人…家族…老若男女・赤子ですら容赦なしに全て殺されたという事実。
……その日その時間、その場に居なかった者を除いて。

先代の弓名手の血筋に在りながら、如何してか弓の扱い(というより、狩り・戦闘そのもの)がどうしようもなくド下手だった俺は、『商売』で生きていく道を選んだ。
鍛冶職人としてののみの能力を鍛えていたから、やはり単身での狩り修練は酷で限界というものがあった。
そんな時、助けてくれていたのが、同胞であり幼馴染のフローネである。

フローネは俺とは違い、弓の扱いと狩り能力に秀でていて、同じく弓師を目指す者達の目標であり、良い刺激を与えるほど。
…とはいっても、あの頃はやっぱりまだ子供で、一流の弓手からすればまだまだのヒヨッコ同然だろうけど。
アーチャー時代にJOBスキルを最大まで伸ばしにかかった為か、ハンターになったのは村を出てアーチャーの修行を始めた3年後の事。
修行の成果と一息つきに度々故郷へ帰ってきたところを、狩り修練に何度も付き合って貰っていた。
そして、5年前のあの日も…。



あの頃のフローネは、やはり狩り好きではあったものの、今ほどの執着心は無かった。
感情表現が不器用ではあったが、人並みに笑ったり怒ったり悲しんだり、後輩の面倒見もよくしていた。
正直、たまたま入ったギルドで"今のフローネ"との再会した時は驚きよりも、近づきがたいオーラを…壁を感じた記憶が有る。
感情を表さない凍りついたような目…。それのためか、睨むような顔つき。口数も減り、必要な時しか殆ど喋らない。人付き合いも自ら拒むかのように距離を置き、突き放すような無愛想さ。

1年という短期間の中、あれ程の変貌をさせたのは、やはり5年前の事がキッカケらしい。



5年前…。
狩りから戻った俺たちの眼前に広がる村は、快晴の夕日を浴びるよりも一層真っ赤に燃え、新月の夜よりも一層黒く焼け朽ちた姿と、炎と燃えた灰の中に立つ一人の男。
賢者のローブを被ったその男の衣は、賢者のソレとは違う色鮮やかさで…眼鏡越しの死神のようなあの目は、今でも脳裏に色濃く焼きついている。


眼前の光景と男の威圧感に、僕の時と体は金縛りにあったかのように硬直した。
状況整理に思考が再び廻りだしたときには、ジャスティは斧を握り、直情的に男に向かっていた。
怒り任せに振るった斧を、男は短剣で軽く流しカウンターを浴びせる。
とどめの魔法詠唱を妨害しようと反射的に矢を射るが、二発目を撃とうと構えた時…男と目が合った僕は、先刻以上の威圧感と悪寒の恐怖に足を竦ませ地べたに座りこんでしまう。

 ―怖い…適うわけ無い…殺される…!!!―

男は何故か僕らにトドメを刺さずに村を去った。

目を瞑れば思いだされる男の目。
まるで「お前は殺すカチもない」「怖れるに足りぬ」とでもいうような。無表情なのに、嘲笑うような、見下されてるような…目。

あの後、僕の中に残っり、動かしたのは『復讐』という二文字。
思いだされる度に募る復讐の怒りと、あの時何も出来なかった自分への苛立ち。
その二つの想いだけが僕を動かし、只管狩りに、強くなるために、あの男に仇討ち出来る程の力を手にいれるために――…。
寝る時間も惜しいくらい、復讐と後悔の念に煽られ、とにかく我武者羅に強さだけを追い求めて狩りに出た。
只管に獲物を追う。
相手の行動を先読みし、確実に射止める。
一時の安らぎも、一瞬の油断も、『復讐』が終わるまでは許されない。
ひとつ気を緩めれば…死。

そんな中、いつしか僕の顔から表情が消え、獲物を逃さまいとする"鷹の目"へと変わっていた…。



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